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【医師監修】インスリンだけじゃない?糖尿病治療の鍵となる「グルカゴン」とは?

糖尿病治療では膵臓から分泌されるホルモン「インスリン」が重要であることがよく知られていますが、そのほかにもインスリンと密接な関係のある重要なホルモンとして「グルカゴン」があります。
今回はその「グルカゴン」についてご紹介します。

「グルカゴン」は、どんなホルモン?

グルカゴンは、主に膵臓のα細胞から分泌されるホルモンです。血糖値を上げる作用があり、インスリンとは逆の働きをもちます。

◎グルカゴンの働き

・肝臓で貯蔵されているグリコーゲンをブドウ糖に分解する
・グリコーゲンの合成を抑制する
・体内のアミノ酸からブドウ糖を合成して血糖値を上昇させる
・インスリンや成長ホルモンの分泌を促進する効果もあると言われる
※ グリコーゲンとは、エネルギーを一時的に保管するためにブドウ糖が変化したもので、筋肉や肝臓に存在する物質のこと

糖尿病というと、血糖値を下げる作用のあるインスリンが特に重要視されますが、糖尿病患者さんが血糖コントロールをおこなう上では、インスリンのみならずグルカゴンの分泌にも注目する必要があります。

グルカゴンと糖尿病の関係

これまで、糖尿病の発症にはインスリン分泌不全とインスリン抵抗性(インスリンに対する感受性が低下し、インスリンの作用が十分に発揮できない状態)の2つが原因と考えられてきました。また、その背景には、遺伝要因や生活習慣といった環境要因がかかわっているとされていました。

グルカゴンは血糖値を上げるホルモンだということはすでに明らかになっており、インスリンと対になるホルモンであることはわかっていましたが、インスリンの研究ほどさかんに行われていませんでした。
しかし、近年ではグルカゴン分泌の調整が糖尿病治療に大きく関与することが再認識され、注目を浴びるようになりました。例えば最近の研究では、「グルカゴン分泌が抑制されると血糖値が低下した」という2011年のアメリカのUnger教授らの研究報告などがあります。これにより、インスリン中心の治療ではなく、グルカゴンがインスリンに与える影響にももっと注目されるべきなのではないかと考えられるようになってきました。

インクレチン関連薬(DPP-4阻害薬、GLP−1受容体作動薬)が開発されたのは、その流れを受けてのことです。なぜならインクレチンは、小腸から分泌されるホルモンで、血糖値が高いときだけ膵臓に働きかけ、インスリンの分泌を促進させて血糖値を低下させるという特徴があるからです。また、これらの薬は、インスリンの分泌を促進する働きだけでなく、グルカゴンの分泌を抑制する働きもあります。

グルカゴンは低血糖発作にも有効

これまでご紹介したように、グルカゴンは糖尿病の発症や血糖コントロールにおいて関わりが深いですが、その他、血糖値を上げる作用を利用して、低血糖発作時の対処にも役立ちます。

糖尿病患者さんは、血糖値を下げるべく、運動療法/食事療法/薬物療法を実施していると、血糖値が下がりすぎて低血糖発作を起こすことがあります。そんな場合に備えてブドウ糖を携帯している人も多いでしょう。しかし、低血糖発作がひどく、意識障害をおこしているときや、動悸、震えなどによりブドウ糖を経口摂取できない場合には救急処置としてグルカゴンを皮下注射または筋肉注射する場合があります。そのため、必要に応じてグルカゴンのバイアル(注射剤)を携帯する必要があります。

しかし、グルカゴンの所持は現状の日本ではまだ浸透しておらず、2013年に厚生労働省研究班(代表:坂根直樹・京都医療センター予防医学研究室長)の報告によると、インスリン療法をおこなっている1型糖尿病患者のグルカゴンの所持は15.9%にとどまっているとのことです。

これはあくまでも1型糖尿病患者さんのデータですが、重症な低血糖症状が現れた際には、2型糖尿病患者さんもグルカゴンを使用することは『糖尿病治療ガイド』においても推奨されています。したがって、グルカゴンとはどういう作用のあるホルモンなのかという知識やグルカゴン注射の使い方を患者さん本人と家族や周囲の人が知っておくことは糖尿病を管理する上でとても大切です。

もしもの時のために

糖尿病についての研究、そして治療法は日進月歩です。昔は糖尿病といえば、インスリンの分泌が悪くなること(分泌不全)や、インスリンの効きが悪いこと(インスリン抵抗性)が原因とされていましたが、現在ではグルカゴンの分泌をいかに制御するかということも、糖尿病の発症・予防・治療に大きく関わると考えられています。

グルカゴンのバイアル(注射剤)は、検査をした上で必要のある人が治療に使用することができます。日本ではまだ広く浸透していないため、医療機関によっては患者さん側から主治医に相談し処方をお願いするケースが多いとされていますが、相談すれば、処方してもらえます。

また、2型糖尿病患者さんであれば低血糖の症状に気づけばブドウ糖を摂取できますが、1型糖尿病患者さんは低血糖の症状が出ていることに気づきにくく、低血糖発作を発症しやすいのも特徴。救急処置薬として普段からグルカゴンのバイアルも所持しておきたいという方もいるでしょう。低血糖発作を起こして意識がなくなってしまってからは自分でバイアルを打つことができません。ご家族などに協力してもらって万が一の際には打ってもらえるようにしておくなど、周りの協力が必要になるということを理解した上で所持を検討してください。

糖尿病の患者さんは、インスリンの知識だけではなく、グルカゴンというホルモンについて知っておくこと、そして低血糖症状に備えてブドウ糖を持ち歩くようにしましょう。

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