糖尿病の症状

知っておきたい!「糖尿病合併妊娠」と「妊娠糖尿病(GDM)」による妊娠・出産のリスクと注意点

女性の糖尿病患者さんの中には、妊娠や出産に大きな不安を抱えている人も多いことでしょう。そこで、今回は女性の糖尿病患者さんに向け、妊娠・出産について知っておきたいこと、気をつけたいことをご紹介します。


妊婦さんの糖代謝異常は2つに分類される

妊娠中の糖代謝異常は、下記の2つに分かれます。


A.妊娠前から糖尿病を発症している『糖尿病合併妊娠』

B.妊娠中に初めて発見される糖代謝異常
   ①糖尿病に至っていない糖代謝異常『妊娠糖尿病(GDM)』
  ②妊娠時に診断された明らかな糖尿病

B.①の『妊娠糖尿病(GDM)』は、全妊婦の約12%の確率で起こるとされています。

患者さん自身が糖尿病であることに気付いておらず、妊婦検診で血糖値を調べて初めて糖代謝異常が判明するケースが多くみられます。『妊娠糖尿病(GDM)』の場合、出産を終えるとほとんどの人は糖代謝機能が正常に戻るとされていますが、将来的に糖尿病になる確率は血糖が正常だった妊婦さんの約7倍にものぼります。そのため、産後も引き続き定期的な血糖検査や肥満防止を心がけることが大切です。


その一方で、B.②の“妊娠時に診断された明らかな糖尿病”と、A.の『糖尿病合併妊娠』は、出産後も変わらず糖代謝異常がみられ、引き続き糖尿病の治療を継続する必要があります。


『糖尿病合併妊娠』と『妊娠糖尿病』。それぞれのリスクは?

●糖尿病合併妊娠

糖尿病を抱えた女性が妊娠した場合、妊娠前から妊娠初期にかけて血糖値のコントロールが正常におこなわれていないと、胎児に流れる血液も高血糖状態となります。それにより、お腹の赤ちゃんの身体にダメージを与え、母子ともに合併症を引き起こすリスクが高まります。

とくに、妊娠初期(4~9週)は胎児の臓器が作られる時期。お母さんのHbA1cが8.4%以上になると、20~30%の胎児が先天奇形を合併する可能性が出てきてしまいます。


また、胎盤を通してブドウ糖が過剰に胎児に供給されると、胎児も高血糖になります。すると、成長因子であるインスリンが過剰分泌され、その結果、出産時の体重が 4,000gを超える「巨大児」になってしまう可能性があるのです。

「巨大児」になると、出産時に「肩甲難産」(赤ちゃんの肩が母体の骨盤に引っかかり娩出されにくくなる状態)となる確率が、正常妊娠の約12倍にもなるという報告もあり、赤ちゃんの腕神経麻痺、骨折の危険が高まります。さらに、出産直後、赤ちゃんが低血糖による昏睡状態を起こす危険性も忘れてはなりません。


<母体の合併症リスク>

母体には、まず非妊娠時と同じ合併症リスクがあります。
1)網膜症、2)腎症、3)神経障害、4)低血糖


妊娠中に起こる特有の合併症としては、次のようなものがあります。
1)妊娠高血圧症候群
 →糖尿合併妊婦の10~27%に合併する
2)早期産
 →糖尿病合併妊娠の19~38%にみられる
3)羊水過多症


さらに分娩時は巨大児による次のような合併症が見られます。
1)肩甲難産
2)産道裂傷
3)帝王切開率の上昇


●妊娠糖尿病

妊娠糖尿病は、胎児の体幹の発育に重要な妊娠初期の血糖値は正常であるため、胎児奇形 のリスクは糖尿病合併妊娠に比べて低いと言えます。

しかし、妊娠中の血糖コントロールの管理が不十分であれば、巨大児、肩甲難産、帝王切開、出生時低血糖、呼吸障害、高ビリルビン血症、心筋肥厚などのリスクが高まってしまうのです。


そのため、早期に妊娠糖尿病を発見し、血糖コントロールをおこなう必要があります。日本産婦人科協会では、すべての妊婦に向けて妊娠初期(初診時または妊娠10週前後)に随時血糖値検査を、中期(妊娠24~28週)には50gGCT(グルコースチャレンジテスト)、もしくは随時血糖値検査をおこなうことを推奨しています。


糖尿病を抱える女性の妊娠には十分な準備が必要

糖尿病合併妊娠のリスクをもつ糖尿病の女性が妊娠を希望する際、糖尿病そのものの合併症悪化と、胎児奇形をはじめとした母子の合併症を防ぐため、計画的な妊娠が推奨されています。

では、糖尿病をもつ女性が妊娠する前に準備すべき項目を挙げてみましょう。


1.血糖値のコントロールをおこなう

<目標値>
HbA1c7.0%未満
(日本糖尿病学会2014-2015糖尿病治療ガイドP90より)


2.糖尿病合併症の有無を検査する
<目安>
糖尿病網膜症・・・眼底所見が正常、または単純網膜症に管理されていることが望ましい
糖尿病腎症・・・腎症第1期(腎症前期)または腎症第2期(早期腎症期)で安定した病状が保たれていることが望ましい
(日本糖尿病学会2014-2015糖尿病治療ガイドP90より)

3. 甲状腺疾患の有無を検査する

4.妊娠する前に食事療法を見直す

5.経口血糖降下薬を服用している場合は、インスリン注射に変更する
→経口血糖降下薬は胎盤を通過し胎児に移行するため、妊娠中の治療には向きません。一方、インスリン注射は胎児に移行しないため、妊娠前からインスリン療法に変更することが重要です。

6.妊娠と糖尿病について十分に勉強し、知識を身につける

7.血糖の自己測定を正確にマスターする

8.月経が不順な時には婦人科を受診
→インスリンは排卵と関連の深いホルモンと言われており、糖尿病によってインスリンの代謝が障害され、排卵障害をきたす頻度が高く、不妊の原因をつくる可能性があります。

9.医師から許可が出るまで避妊をおこなう

10.血糖コントロール不良や糖尿病合併症がみられる場合は、糖尿病患者の妊娠に通髄する専門的医療機関での治療も視野にいれる
(日本糖尿病学会2014-2015糖尿病治療ガイドP91より)

糖尿病とともに過ごす妊娠中の食事療法と運動療法、薬物療法について

<食事療法>

妊娠中の母体の体重増加は、

BMI18.5以下 →9~12kg
BMI18.5~25未満→7~12kg
BMI≧25 →約5kg

を目標とし、食事や運動で血糖値と体重をコントロールしていきます。


食事療法は、胎児の発育に必要な栄養とカロリーを摂取しつつ、脂質や糖質を控えることが基本。一日の目標総カロリー数は、妊娠周期によって異なります。


▼摂取カロリーの計算方法
妊娠前の体重×30kcal+付加量

(付加量)
前期  50kcal
中期  250kcal
後期  450kcal
授乳期 350kcal
※『人の食事摂取基準2010年版』より


食事について注意すべき点として、胎児のエネルギー源となる糖質は、胎児に必要な分はしっかりと確保しつつ、間食などによって過剰に摂取しないよう気を付けることが挙げられます。

また、脂質は体重増加、動脈硬化を促進するため、揚げ物など、油を多く使う食事は控えましょう。
基本的には、あっさりとした和食メニューを食べることで、結果的に糖質や脂質の摂り過ぎを防ぐことにつながりますから、積極的にレパートリーに取り入れることをおすすめします。


<運動療法>

妊娠中の運動療法では、医師と相談しながら、ウォーキングやヨガストレッチなど母体と胎児に影響の少ない軽運動をおこないます。

運動療法で期待できる効果は下記のとおりです。


  • 基礎代謝を高めることで血糖コントロールの改善につながる
  • 妊娠期間中のストレス解消や気分転換になる
  • 足腰の筋力がアップし、分娩時に必要な体力がつく
  • 全身、特に骨盤内の血流改善につながる
  • 腰痛や肩こりが解消される
  • 運動不足を解消し、肥満も予防できる

出産への体力づくりの意味でも、毎日軽い運動をおこなう習慣をつけると良いでしょう。
しかし、切迫流産など母子どちらかに異常が見られる場合には、必ず主治医の許可が下りてから運動をはじめることが重要です。


<薬物療法>

妊娠糖尿病の多くは食事療法と運動療法で血糖の正常化が可能ですが、一部ではインスリン治療が必要になることがあります。一方、糖尿病合併妊娠の場合、食事や運動に加えてインスリン治療をおこなうケースも多くみられます。


前述にもあるように、インスリンは胎盤を通過しないため胎児に影響が出る心配がありません。また、経口血糖降下薬よりも血糖管理が容易であることもインスリン治療の利点です。

しかし、どのインスリン薬でも良いわけではありません。持効型インスリンの「インスリングラルギン」については、妊娠中の使用に安全性が確認されていないため、妊娠を希望する際には、中間型インスリンに変更し、血糖コントロールを安定させる治療方法をとり妊娠に備えます。


妊娠中の糖尿病は血糖コントロールで乗り切ろう!

『糖尿病合併妊娠』と『妊娠糖尿病』、どちらにも共通し「安定した血糖コントロール」が重要課題となります。

食事や運動による自発的な血糖コントロールはもちろんのこと、場合によってはインスリンを用いた治療で確実に血糖を正常値にコントロールし、お母さんもお腹の赤ちゃんにも合併症が起こらないよう治療していきましょう。

そして、産後も引き続き血糖値へのフォローが必要です。

『糖尿病合併妊娠』や妊娠時に診断された明らかな糖尿病については、育児に追われる時期であっても、治療による血糖コントロールを心がけ、症状の悪化を防ぎましょう。


また、『妊娠糖尿病』の場合も油断はできません。産後に糖代謝が正常に戻ったとしても、妊娠糖尿病を経験した人の半数は、20~30年後に糖尿病へ移行するとの報告があり、早い人では産後数カ月後には糖尿病へ移行してしまうケースもあります。

妊娠糖尿病を患った方は、定期的に血糖値の検査を受ける、日頃から食べ過ぎや甘いものの摂り過ぎに注意するなど、普段から糖尿病移行のリスクに細心の注意をしていくことが大切です。

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