【医師監修】急な症状に注意!「糖尿病ケトアシドーシス」とは?
糖尿病患者さんであれば、「糖尿病ケトアシドーシス」という言葉を1度は聞いたことがあるかもしれません。
今回は、この「糖尿病ケトアシドーシス」のメカニズムや、症状、起きたときの対応策などをまとめていきます。
なぜ起こる?糖尿病ケトアシドーシス
糖尿病ケトアシドーシスは急性代謝失調で、ひどい場合には脳浮腫や昏睡を引き起こし、最悪の場合には死に至ることもある怖い症状です。
糖尿病は、糖が正常に代謝できなくなる病気。
そのため血液中に糖が余ってしまい、高血糖が続くことによって全身の血管や神経にさまざまな障害を及ぼします。
糖尿病ケトアシドーシスは、何らかの原因で急激に糖の代謝機能が弱まることによって、極度の高血糖状態になり発症します。
<糖尿病ケトアシドーシスの発症メカニズム>
血糖値を下げる(糖の代謝を促す)ホルモン「インスリン」の極度の不足。
「コルチゾール」「アドレナリン」などのインスリン拮抗ホルモンの分泌が増えて、インスリンの働きが弱まる。
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その結果、糖の代謝ができなくなり、体はエネルギー不足に。
代わりに、体に蓄積しているたんぱく質や脂質を分解してエネルギーを産生。
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たんぱく質や脂質を分解する際に、副産物として「ケトン体」という物質が産生。
ケトン体が増えると血液が酸性に傾き(通常は、弱アルカリ性)、糖尿病ケトアシドーシスが発症
糖尿病ケトアシドーシスは、インスリンの分泌がほとんどない1型糖尿病で起こることが多いですが、2型糖尿病でも清涼飲料水の飲み過ぎなどで急激な高血糖状態に陥り、発症すること(ペットボトル症候群)もあります。
糖尿病ケトアシドーシスの症状は?
高血糖状態になると、腎臓が水分と一緒に糖を排せつしようとするため尿量が増え、ひどい脱水状態に陥ります。
脱水になると、血液量が減ってさらに高血糖が進んでしまいます。
また、「ケトン体」が増えると、以下のような症状が起こり、ひどくなるにつれて自分では対処することが難しくなるため、周りの人の助けが重要となります。
<糖尿病ケトアシドーシスの症状例>
- 多尿
- 吐き気、悪心、嘔吐
- めまい、頻脈、異常な眠気、だるさ
- 速く、深い呼吸(クルマウル呼吸)
※吐いた息にはアセトンという物質が含まれ、フルーツのような匂いがします。 - 意識障害、昏睡 など
もしもに備えて、周りの人が代わりに病院に連絡を。
上述のような症状が見られた場合には、早急に適切な対処を行う必要があります。糖尿病ケトアシドーシスの症状が見られたら、すぐに病院へ連絡しましょう。
家族や周りの人が主治医に連絡したり、対処できるようにしておくことが大切です。
病院では、インスリンやカリウムの適切な投与、輸液や電解質の補給などが行われ、早急に治療が行われます。
インスリン注射は、医師の指示のもと適切に
インスリン療法を行っている方で、インスリン注射を打たなかったことで糖尿病ケトアシドーシスを起こすケースが多くあります。
体調を崩して食事が十分にとれなかったとき(シックデイ)などに、食事を摂らなければ血糖値が上がらないと思い込み、インスリン注射を自己判断で止めてしまうことで起こりがちです。
体調不良のときは、血糖値を上げるホルモンが分泌され、たとえ食事を摂らなくても血糖値が上がりやすいため、自己判断でインスリン注射をパスすることは禁物です。
症状が悪化する前に、病院へ
糖尿病ケトアシドーシスは、ときに一刻を争うことがあります。
多尿、吐き気や悪心などがあり、糖尿病ケトアシドーシスが疑われる場合には、迷わず速やかに医師へ連絡し、適切な処置を受けましょう。