糖尿病コラム

糖尿病は治せる病気?

結論から言うと、糖尿病は一度患ってしまうと完治させることはできません。

糖尿病は、生活習慣や膵臓疾患等によりインスリンへの反応性の低下やインスリンの分泌量が低下してくることによって発症します。

またインスリンはすい臓のβ細胞で作られますが、高血糖状態が続くことなどにより、β細胞の機能低下や減少を引き起こします。β細胞は一度機能が低下したり、その数が減少してしまうと元に戻らないため、糖尿病は完治させることができないのです。

しかし、なるべく初期の段階で早めに対策をとることで症状が治まり薬も不要となる寛解状態(症状が好転し、落ち着いている状態)にすることはでき、普段の食生活や運動などによってその寛解状態を維持していくことは可能です。

しかし、普段から継続して食事や運動に気をつけてきちんとした生活を送らないと、糖尿病はまたすぐに再発してしまいます。

現在では、糖尿病の治療において常に新しい薬が研究され、いろいろな手術法や治療法も開発されています。

新しいメカニズムをもった糖尿病薬の開発

糖尿病の治療薬というと、不足しているインスリンを補うインスリン製剤など、いくつかの経口糖尿病薬(口から飲む内服薬、飲み薬)があります。

糖尿病の主な経口糖尿病薬は、
  • インスリンの分泌を促進させる薬
  • 糖の消化・吸収を遅らせる薬
  • 糖の代謝を促進させる薬
  • インスリンに対する反応を良くする薬
がよく使われています。
しかし残念ながら、これらの薬は糖尿病の進行を遅らせ、寛解させることはできても、完治させることができるものではありません。

そこで現在注目を集めている経口糖尿病薬が、「イプラグリフロジンL-プロリン」という今までになかったメカニズムで糖尿病を治療する薬です。
2014年1月17日に承認され、近々日本でも処方が可能になります。

これまでの経口糖尿病薬は、インスリンの分泌や糖の吸収に働きかけるものだったのに対し、この薬は「糖の排泄」に着目したものです。

尿は腎臓で血液がろ過されて作られますが、健康な人の場合、その際に血液中に含まれる糖は尿細管というところでほぼ100%が再吸収され、基本的には尿に排出されることはありません。
(ただし健康な人でも多量の飲食物を摂取した場合など一時的に尿に糖が出ることはあります。)

糖尿病患者さんの場合は、血糖が高くなっている状態で、腎臓の処理能力以上の糖があって再吸収が追いつかず、尿に糖が排出されています。 

「イプラグリフロジン L-プロリン」は、尿から糖の再吸収を抑えることで、血液中に戻る糖を減らし、尿に排出してしまって、血糖値を下げるというしくみです。

糖尿病患者さんの場合、血糖が上がっているため元々尿中に出てくる血糖は高いままですが、血液に戻る糖が減るため血糖は下がってきます。

このタイプの薬は「SGLT2阻害薬」といわれ、「イプラグリフロジン L-プロリン」の他にも欧米などで承認がおりている薬が日本でも2型糖尿病に対する薬として、今後承認されてくる見込みです。

ちなみに、2014年2月現在、治験が終わり申請段階にきているものには、ブリストル・マイヤーズの「ダパグリフロジン」や中外・サノフィーの共同開発の「トホグリフロジン」という薬があります。

なかなか進まない吸入式インスリン薬

インスリンの不足を補う一般的な方法としてインスリン注射があります。

インスリン注射薬は、通常症状に合わせて1日1~3回程度行う必要があり、また痛みも伴うため、皮下注射に代わるインスリンの投与方法がいろいろなメーカーで研究されてきました。
特に粉末のインスリンを吸入するタイプのインスリン薬は長年待ち望まれていました。

そしてついに米国では吸入式インスリン薬が2006年から使用され始めました。
ちょうど喘息の吸入薬の吸入器具のように粉末のインスリンを筒状の容器の中に噴霧させ、その中に噴霧されている薬を筒の出口に口をつけて吸い込みます。
食前10分以内に吸入すると、肺粘膜から毛細血管を通り肺胞からインスリンが吸収されていきます。

吸入式インスリンのメリットは、インスリン注射による痛みや恐怖から患者さんの負担を軽減できるところにありました。
またインスリンが肺の粘膜から毛細血管を通って吸収されるので、効果が早く現れるため食後の高血糖をコントロールしやすいという利点がありました。

しかし、その後、小型で注射の痛みを軽減した使い捨てのインスリンペン型注入器等の開発が進みました。

一方はかさばる吸入器を持ち歩かなければならなかったり、使用前及び半年から1年に1回は肺機能検査を受けなければならず、肺に疾患がある人は使えないなどの制限もありました。

結果的に携帯性に優れ使い捨てできる便利な小型ペン型注入器の普及等で、保険的にも自己負担額が大きく使用にいろいろ面倒な制限が多かった吸入式インスリンの売り上げは下がってしまい、吸入式インスリンは市場から姿を消していったのです。

糖尿病で行われる外科手術というのはどんなものなのか

日本では糖尿病の治療というと、食事療法、運動療法を行い、薬物療法を併用するというのが一般的なイメージかと思います。

日本ではまだ少ないのですが、欧米では1型糖尿病で血糖コントロールが困難な患者や腎不全の合併症を伴っている場合に、すい臓の移植や、すい臓と腎臓の同時移植が行われるケースがあります。

肥満症の場合、それによりインスリンに対する反応性が低下してしまって高血糖の原因になっています。
しかし、肥満はすぐに解消できるものではありませんので、その間高血糖の状態が続くことで、血管等に負担がかかってしまいます。

そこで、外科的手術である減量手術を行うことが有効と言えます。
肥満症の合併が2型糖尿病である場合、米国では、ADA(米国糖尿病協会)の2009年のガイドラインであるClinical Practice Recommendationsによると薬などでうまくコントロールできないケースは外科的治療も考慮すべきであるとしています。

これは2型糖尿病患者で手術をした患者13万5000人相当の600余りの論文を分析した結果、78%の人が寛解し、87%の人に改善が見られたという事実に基づくもので、最近日本でも注目されはじめています。

日本肥満症治療学会の「日本における高度肥満症に対する安全で卓越した外科治療のためのステートメント2010」では、外科的手術の適応条件として、肥満で糖尿病治療が主目的の場合はBMI(肥満度を表す体格指数)32以上が対象になるとしています。

どのような外科手術を行うかというと、バイパス手術で十二指腸や空腸といった小腸上部を通らずにバイパスさせるもので、2型糖尿病に関しては、胃と小腸下部をつなげてしまう手術が効果的と言われています。
日本でも胃バイパス術は多く行われていて血糖値が下がったとする報告が数多くあげられています。

糖尿病は治すのではなく、寛解させうまくつきあって行くことが大切

糖尿病の治療薬も、世界で多くのメーカーが研究を重ね、新しいメカニズムをもった薬も開発されてきています。腎臓からの糖の排泄を促すことにより血糖を下げるという新しい薬もこれから実際に処方され、効果が出てくるでしょう。

しかしながら新しい薬が実際に使えるようになるには、効果はもちろん安全面での根拠も治験で示していかなければならないため膨大な時間がかかってしまう難点もあります。

また、糖尿病でかつ肥満の方には、胃バイパス術が多く行われるようになってきました。
海外で多くの実績がある手術も肥満でなければ対象外ですし、外国人と日本人の代謝の違いといった安全面での問題も検討しなければいけません。

糖尿病は生活習慣病と言われるとおり、食事療法や運動療法により、不足してしまっているインスリンの必要量を下げることが大切です。
このように原因を取り除かなければ一時的に寛解しても、糖尿病が再発してしまいます。

有効な治療法も徐々に出てきますが、現段階では、地道な食事療法・運動療法に加え必要に応じて薬物療法を行い、寛解状態を維持していくことがとても大切です。

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