なぜ起こる?糖尿病で味覚障害。味覚障害に良い栄養素とは?
糖尿病の症状は、手足のしびれ、のどの渇き、多尿などがよく知られていますが、中には「味覚障害」の症状が出ることがあります。
糖尿病における味覚障害は、どのようにして起こるのでしょうか。
そもそも味覚障害ってどんな病気?
味覚障害は、味覚の感度が落ちたり、なくなったりする病気。一般的には、インスタント食品・加工食品の摂り過ぎなど食生活の乱れ、ストレス・風邪などによる舌の表面の異常、薬の副作用、加齢などが主な原因と言われており、症状としては次のようなものがあります。
<味覚障害の症状例>
- 食べ物の味がわからない、感じられない
- 料理の味が濃すぎると人からよく言われる
- 本当は甘い食べ物なのに、苦いなど違った味に感じられる
- 何も食べていないのに、塩味や苦味、渋みなどを感じる など
「亜鉛」不足に注意
また、特に食事においては、ミネラル分である「亜鉛」の不足が味覚障害を引き起こす大きな原因と言われています。私たちの舌には「味蕾(みらい)」と呼ばれる味を感じる細胞がありますが、この味蕾が新しく生まれ変わる際に亜鉛を必要とします。そのため、亜鉛が不足すると、味蕾の新陳代謝がうまくいかず、味覚障害になりやすいのです。
糖尿病と味覚障害の関係とは?
糖尿病を患うと高血糖状態が長く続くことで、血管や神経にダメージを与えてしまいます。糖尿病の三大合併症の一つである「神経障害」では、手足のしびれ・痛みが多く見受けられます。その神経障害の一つとして、味覚に関わる神経が障害されてしまうと、味覚障害が起こることがあります。
また、糖尿病腎症で腎臓の機能が低下している場合には、味蕾の新陳代謝に欠かせない亜鉛が吸収されずに排出されてしまうため、より味覚障害が起こりやすくなります。
糖尿病患者さんの味覚障害の治療は?
糖尿病患者さんにおける味覚障害の治療の基本は、やはり「血糖コントロール」です。決められた摂取カロリー内で栄養バランスのとれた食事をする、適度な運動をするなど、規則正しい生活を送ることが大切です。
味覚障害そのものの治療としては、亜鉛製剤や、必要に応じてその他のビタミン剤が処方されることがあります。味覚障害に直接的に作用する治療薬は、現在のところ日本では認可されておらず、研究開発が進められています。
味覚障害の原因となる亜鉛不足。亜鉛を多く含む食べ物は?
先にも述べたように、亜鉛不足は味覚障害を起こす原因の一つ。亜鉛を多く含む食べ物は次の通りです。
- 牡蠣
- うなぎ
- 牛肉
- チーズ
- レバー
- 卵黄
- 小麦胚芽
- 納豆
- カシューナッツ
- アーモンド
- わかめ
- ひじき など
<亜鉛を多く含む食べ物>
※1日の亜鉛摂取量目安 成人男性:12mg/成人女性:9mg
通常の食事からの摂取で摂り過ぎになることはありませんが、サプリメントなどで補給する場合には、1日の規定量を守り、摂り過ぎに注意しましょう。1度に大量に摂り過ぎた場合、急性亜鉛中毒を起こし、嘔吐・めまい・胃痛などが起こる可能性があります。また継続的に過剰摂取が続くと、貧血や白血球の減少、免疫機能の低下、コレステロール・糖の代謝異常を起こすこともあります。
糖尿病患者さんで味覚に異常を感じたら、まずは医師へ相談を
亜鉛を含むサプリメントなどは市販されていますが、糖尿病患者さんの場合は、個人の病状によって制限しなければならない栄養素などがあるため、自己判断でのサプリメントの利用は避けるようにしましょう。
食べ物の味を感じない、味がいつもと違って変に感じる、などの症状があれば、早めに医師に相談するようにしましょう。